筋肉質の会社?

以前から(もう10年以上前から)聞いたことのある言い回しだ。聞く度に「またかよ!バカじゃねーの?」と思っている。不況の時ほどよく聞かされるが、どうして経営層の人間というのは、この手の流行り言葉が(流行ってないけど)好きなのだろう?誰が言い出したのかは知らないが、少なくとも複数人の経営層の人間から直接聞かされたことがあるし、ググればその手のスローガンを掲げる会社はいくらでもある。言いたいことはわかる。要するに余分な脂肪(不採算部門、赤字部門)をなくし、筋肉(お金になる部門)だけにスリム化したい、ということが言いたいのだ。それが言いたいのは分かり切っているが、あえてバカだと言いたい。どっかで聞いた言葉を自分なりに咀嚼せずに、ただ語感が良いから、というだけの理由で安易に使っているようでは、経営者として不況時の会社を再建することなど到底できないと思うのだが…。
筋肉をつける(維持する)には、ものすごい量の訓練が継続的に必要だと言うことをご存じないのだろうか?個人的な感覚ではあるが、100のエネルギーを投入すると1〜10程度の筋肉がつく(維持できる)という感じではないかと思っている。(この比率は鍛えれば鍛える程開くと信じる。)しかも筋肉がついたからと言って必ず勝てる(儲かる)という保証はどこにもない。(確実なのは練習を全くしないのに勝てる筈がない!ということだけだ。)会社で言えば、ものすごい金額と期間の先行投資をするということになる。例えば10年先を見据えて研究部門に巨額の投資をするようなものだ。しかも確実に儲かるという保証は、当然ながらどこにもない。ということは、「筋肉質の会社」というのは、会社全体を今は全く儲からない(10年後に儲かるかどうかも全く分からない)研究部門だけにする、と言っているようなものだ。それともステロイドでも使って(何か不正をして)筋肉を付けて儲けたいということかも…?
これに対し身体における脂肪というのは、万が一の飢餓に備えて蓄えているエネルギーである。35億年の歴史で培ってきた生命の知恵だ。最近は食うに困らない時代なので身体が脂肪を貯めすぎることができてしまい、色々と弊害が持ち上がっているだけのことだ。この弊害ばかりをことさら大きく取り上げるため脂肪は悪者扱いとなっている。しかしそれにしたって、実はごく一部の先進国だけで起こっている問題で、世界の大半は飢えているはずだ。話が少しそれたが、脂肪というのは「余分なもの」ではなく、万が一に備えて蓄えたエネルギーなのだから、会社で言えば内部留保、余剰資金にあたる。お金が有り余っていて困る会社があるのだろうか?まあ、お金がいっぱいあると、使い込みだの、横領だの、背任だの、脱税だのをやりたくなる人が出てくるかもしれないので、その意味で困る可能性はある。
つまり筋肉や脂肪を私なりに正確に解釈すると「会社に筋肉なるものを付けるにはそれが生成するエネルギー(利益)を遙かに上回る程の投資が必要なはず。」ということと「会社で言えば脂肪というのはお金に相当するのだからいくらあっても困らないはず。」の2点となる。この意味で「筋肉質の会社」というのは、お金は無いのに先行投資ばかりしていることになり即潰れるはずである。会社の体質として特に不況時の目標に掲げるには甚だ不適切な例えであると考える。
蛇足だが、某CMで「余分3兄弟」とか言って脂肪、塩分、糖分を悪者扱いしているが、あれも疑問に思う。脂肪も塩分も糖分も摂らなかったら即死亡だよね。問題なのは摂りすぎでしょ?
なお、私個人は世間の中年(初老?)オヤジと同様?メタボ気味で、脂肪、塩分、糖分の摂りすぎに注意しなければならないと同時に運動不足を解消しなければならない、という悩みを抱えていることは言うまでもない(汗)。