You don't have to worry.を通じる英語にする

昨日のネタも、思わぬところから(こればっかりだな)ユーミンの歌詞「You don't have to worry because I love you.」が英語として意味が通らない、などと書き込むことになってしまった。その割に「正解」を示していなかったので続き。
問題なのは、実は主語がYouだ、というところにある。日本語は「主語」という概念が曖昧で、構文上はなくてもよいし、あっても意味的に別のものが主語だったりすることがある。しかし英語では主語は(命令文をのぞけば)厳格に存在し、意味上の主語と一致する。そして動詞も必ず存在する。英語の文というのは「主語」が動作の主体で、それが「動詞」で示す動作をする、ということを表している。だからYou don't have to worry.というのは、You本人がworryでなくならなければならない!と言っているのである。Youが主語だということはYouに動作をさせる!という意味になってしまう。日本人の勘違いは実はもう一つある。これはYouを「あなた」と訳すことに起因している。Youは「あなた」であると同時に「おまえ」でも「きさま」でもある。You自体に尊敬とか侮蔑とかいった概念は含まれていないのである。
そもそもあの文章が(日本語として)言いたいことは、「あなたは何も心配しなくて大丈夫ですよ、あなたを愛しているから、私が守ってあげます。」である。Youは動作をしなくていいのだ。しかし、一番大事な部分を英語にせずに日本語でも「私」を省略して歌っているから英語になっていない。英語にするには主語はIでなければならない。「私があなたの心配事は全部取り除いてあげます。だって愛しているから。」という英語にしなければ意味をなさないわけである。例えば「I will protect you from any kind of your worry because I love you.」とすればよい。あるいは、どうしてもIを主語としたくないのであれば、shallを使うという手もある。shallというのは、日本の英語教育ではちゃんと教えていないようだが、ものすごく強い言葉で、法律的な世界とか厳密な規定をする文章など以外では普通まず使われない。口語で使うと、それだけで話題になるほどである。例えば太平洋戦争終了後に日本に来たマッカーサーがshallを使った!(I shall return.と言った)という有名な話がある。勘違いしないで欲しいのだが、この言葉が有名なのはshallを使ったからである。それほど使うこと自体が珍しいのである。ターミネーターですら、あの名場面でも「I'll be back.」としか言っていない。話を戻すと、ここでは話し手(I)の強い意志で未来を変えてみせる!という強い決意表明として使う。「Your worry shall be eliminated because I love you.」という感じ。日本語に直すと「あなたの心配事は(私が私の意志で)何が何でも消し去ってみせる!なぜならあなたを愛しているから。」となる。
なお、このような英語だと歌詞としてうまく歌に乗らないとか、protectやeliminateよりももっと語感の良い単語はないか(あると思うが)といった相談には応じられない。これはあくまでも「通じる英語」の話である。私は作詞家ではない。