ないものはない

全然故事じゃあないけど、いいや。「ないものはない」ってよく考えると2通りの意味があるでしょ。「ないものは何もない、つまり何でもある。」っていう意味と、「ないって言ってるんだから、ないんだよ。」っていう意味。前者は家電量販店とかネットショップとかの宣伝文句的な使い方で、後者は普通の会話でよく使われる。若い頃この文章の意味の違いはどこから来るのか、納得のいく説明が得られなくて、よくこれをネタに飲んだ。もう15年以上昔の話になるけど、京都にある超難関某国立大学(最近クイズ番組とかによく出てくるインテリ芸人の出身大学)の先生にこの話をしたところ「面白いですねぇ。」と言ってくれた。その先生は、コンピュータによる自然言語処理の研究をしていたりする人だったのだ。それで「何かの機会にこの例を使って論文を書こう。」とも言っていた。そんなわけで、この例の載っているその手の分野の論文がもしあったら、出典は私です(爆)。その先生は今、東京にある超超難関の某国立大学(恐らく日本で一番難しくて誰でもその名を聞けば恐れおののく大学)の先生をやっていると思います。
因みに、この2種類の意味の違いですが、「ないもの」の「もの」が何を指しているのかが違う、というのが私が納得している解釈です。前者の「もの」は「すべてのもの」を指している。後者の「もの」は、その時点での文脈で暗黙的に了承されている「特定のもの」を指している。例えば:

子:アイスクリーム食べたいんだけど…
母:冷蔵庫に入ってるでしょ。
子:入ってないよ。
母:じゃあ、ない。
子:えー、何で?
母:ないものはないの。

という会話では「ないもの」は「アイスクリーム」であって「すべてのもの」ではないというような意味です。逆に「何でもある」という意味で使うときの「もの」は、「すべてのもの」の中から何でもいいから適当に何か取ってきてよいわけ。で、それがないということは(例えばこの店では)あり得ないので、何でもあるよ、という意味。